国際協力プロジェクト

JICA ウガンダ国 北部ウガンダ生計向上支援プロジェクト フェーズ2

分野 農業開発
事業形態 技術協力
期間 2021年9月から2026年8月まで

事業の背景

農家が市場調査の結果をグループメンバーに発表している様子

ウガンダ北部は土壌が肥沃で降水量も多く、農業のポテンシャルが高い地域です。住民の約90%は農業に従事していますが、政府軍と神の抵抗軍による内戦(1986年~2006年)の影響で、農業に関する経験や知識が十分に普及していません。こうした中で、小規模農家の生計向上につながる支援が、貧困削減およびウガンダ国内の南北格差是正という観点から求められています。

 

当社は、2016年から「北部ウガンダ生計向上支援プロジェクト(フェーズ1)」を通じて同地域の小規模農家の生計向上を支援してきました。フェーズ1は、「市場志向型農業」(市場を意識した野菜栽培及び販売の導入)と「生活の質の向上」(家族の家計管理、食料在庫管理、栄養改善等の農家の生活全般の改善)を両輪とする、「生計向上アプローチ」をアチョリ地域で開発・普及するものでした。

 

当プロジェクト(フェーズ2)は、さらに多くの小規模農家に対する生計向上アプローチの定着と、アプローチ自体の質的な深化(栽培方法や収支管理等の技術レベル向上)を図ることで、アチョリ地域の小規模農家の生計向上を支援するものです。

 

※北部ウガンダ生計向上支援プロジェクトフェーズ1の紹介ページはこちら


基本方針

「アチョリ地域のより多くの小規模農家に対して、生計向上アプローチを普及するための効果的な方法・体制の確立」

プロジェクトメンバーと農業普及員の集合写真

フェーズ1とフェーズ2の最大の違いは対象農家の数です。生計向上アプローチの普及対象となる農家グループ数は、フェーズ1の80グループから、フェーズ2では500グループ(1万5,000人程度)と約6倍になりました。

 

多くの農家を普及対象とするために、プロジェクトはカウンターパートの農業畜産水産省及びアチョリ8県の地方政府と緊密に連携して活動に取り組んでいます。中でも、農家グループの研修を担当する地方政府の農業普及員はフェーズ2の鍵となる存在です。

 

農業普及員が円滑に研修を実施できるよう、プロジェクトは生計向上アプローチに関する集合研修を開催しています。また、活動の進捗を関係者が集まるチャットグループを通じて報告してもらうなど、ウガンダ政府と一体となって活動を盛り上げるための工夫を凝らしています。

 

「アチョリ地域の現実に即した乾期栽培技術の開発」

フェーズ1とフェーズ2のもう一つの大きな違いは乾期栽培の導入です。乾期の野菜栽培は成功すれば大きな収益を生みますが、干ばつの可能性や比較的大きな初期投資を必要とするなど、小規模農家にとっては大きなリスクを伴います。しかし、こうした実態を十分考慮する前に、「乾期栽培の促進」というスローガンが独り歩きしてしまうことも珍しくありません。

 

当プロジェクトでは、畝間灌漑やスプリンクラー灌漑、手灌水といった複数の灌漑技術や作目を比較実証しています。また、どのくらいの初期投資と運営コストが必要なのかも計算しています。その上で、農業普及員をはじめとする政府関係者にそれぞれの技術の優位性や小規模農家による導入の可能性を考えてもらうことで、アチョリ地域の現実に即した乾期栽培技術の開発に取り組んでいます。

 


主な活動

フェーズ2は、アチョリ地域の小規模農家の特性をふまえた生計向上アプローチを確立・普及することをプロジェクト目標に活動しています。野菜を「売るために作る」という市場志向型農業だけではなく、売って得た収入を家族みんなの幸せのために使う「生活の質の向上」という側面を組み合わせていることが、生計向上アプローチ最大の特長です。

 

対象となる農家グループの数が大きく増えたので、フェーズ2では、ウガンダ政府との連携がこれまで以上に重要となります。そのため、プロジェクトは農業普及員に対する集合研修や県の生産局長・農業課長を対象とした普及計画の策定会議など、ただ知識を伝えたり、協力をお願いしたりするのではなく、ウガンダ政府と普及の方法を一緒に考えていくための機会を多く設けています。

 

フェーズ2では、デジタル技術も積極的に導入しています。プロジェクトは農業普及員にタブレットを一台ずつ配布し、研修の進捗をクラウドにアップロードしてもらっています。この進捗を、県の農業課長や中央省庁の関係者にもモニタリングしてもらうことで、活動に対するウガンダ政府の自主性の醸成にも取り組んでいます。

 

今後は、アチョリ地域やその周辺部における野菜の市場・流通の枠組みや、農村内部で生計向上アプローチがどのように対象農家以外の方々にも伝播しているのかといった点も調査していきます。このような活動から、アチョリ地域をより包括的かつ詳細に理解し、生計向上アプローチの普及による農家世帯の家族みんなの幸せを実現するために、今まで以上に現地に根ざした取り組みを行っていきたいと考えています。

 

※研修の流れや詳細については、フェーズ1のプロジェクト紹介をご参照ください。

(2022年6月現在) 

 

農業普及員向けの乾期栽培TOTでのディスカッションの様子

農家研修の参加者への修了書の授与

農業副大臣による農家グループの圃場視察

 


 

コンサルタントの想い

事業部次長

山下里愛

私がコンサルタントになりたいと思ったきっかけは、ウガンダでの協力隊活動でした。当時(2002~2004年)のウガンダ北部は内戦中だったため、足を運ぶことができず、毎日のように流れてくる悲惨なニュースを見聞きし、ただ心を痛めるだけでした。「内戦が終わったら、いつか北部に行きたい」と強く思っていました。現在、復興・開発途中のウガンダ北部でコンサルタントとして働けることには、この上ない喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。

当プロジェクトのフェーズ1を開始した2015年は、まだ内戦の影響が色濃く残り、心に深い傷を負った人々が多くいました。彼らの社会復帰や自立のため、そして「家族ひとりひとりの幸せのために」支援を続けてきた結果、対象農家グループの収入が向上し、その家族の生活も少しずつ改善されました。フェーズ2では、その効果をもっともっと多くの農家さんに届けるべく、大好きなウガンダのために奮闘していきたいと思います。