国際協力プロジェクト

JICA 南スーダン国 スポーツを通じた平和促進プロジェクト

分野 平和構築
事業形態 技術協力
期間 2021年10月から2025年3月まで
事業の背景

第6回NUD開会式の様子。各州の旗を掲げながら入場行進を行った。

1950年代から続く紛争を経て、南スーダンは2011年7月にスーダンから独立を果たしました。しかし、独立後も国内の権力闘争を背景にした民族間の対立が継続的に発生しており、南スーダンが平和を実現し、独立国として安定した発展を遂げるためには、民族間融和を通じた包摂的な社会の形成が不可欠となっています。

 

JICAはスポーツを通じた融和と平和促進を目的として、全国スポーツ大会「国民結束の日」(NUD: National Unity Day)の開催支援を行い、若年層を中心とした国民間の融和を進めてきました。若年層に対し、スポーツを通じた平和促進を更に推し進めるために、学校やスポーツアカデミーへの活動支援や、資金的・技術的な支援を受けるためのスポーツ競技団体や国際機関・NGO等と青年・スポーツ省の連携体制の構築が必要とされています。

 

本プロジェクトでは、NUDの開催を継続的に支援するとともに、学校やスポーツアカデミーを対象としたパイロット事業の実施や、関係団体との連携強化を図ったプラットフォームの構築を目指しました。

 


基本方針

本プロジェクトでは、スポーツを通じた平和促進活動を推進するため下記基本方針を軸として活動を行いました。

 

1.現地主体のプロジェクト活動の実施

どのような「平和」が南スーダンの文化・社会的風土に合っているかは、現地の人々が良く知っています。「現地の人々こそがエキスパート」という認識のもと、常に現地関係者を意思決定の中心に据える案件運営となるよう心がけました。特にスポーツアカデミーとの活動においては、現地の皆様から学ぶ姿勢を貫いたことで、活動の方向性が定まり、草の根レベルの平和促進に向けた糸口を見出すことができました。

 

2.地方活動への支援

ジュバ市だけでなく、他州の関係者に向けた研修やワークショップを通して、スポーツを通じた融和の機会を地方にも創出することを目指しました。

 

3.開発パートナーとの連携強化

国際機関・ドナーやNGO・民間企業からの資金動員を得るメカニズムを構築し、本プロジェクト終了後も平和促進活動が持続的に続くことを目指しました。

 


主な活動

大会中盤の「Peace Day」では、レクリエーションスポーツを通じて選手間の交流促進を図った

本プロジェクトでは、①NUDの継続開催支援、②学校・スポーツアカデミーを対象とした草の根レベルの支援、③開発パートナーとの連携体制構築を中心に活動を行いました。

 

NUDの開催に当たっては、「包摂性」と「公平性」を重視し、大会プログラムから運営に至るまで両側面が確保されるよう努めました。例えば選手選考では、主催側の関係者が実際に各州に訪問し、公正公平な方法で選考されているか確かめました。さらに第7回大会からは、文化的な制約により女性のスポーツ参加が叶わない現状を打開するため、男子サッカーの代わりに女子サッカーを導入するなど、大会形式を大きく転換させました。当初は反対意見もありましたが、女性がスポーツ参加することの意義やそれを踏まえたより積極的な措置を講じる重要性について大会関係者間で丁寧に議論し、最終的には関係者合意のもとで女性を中心に据えた大会が開催され、同様のアレンジとなった第8回大会は主催者の青年・スポーツ省が過去最高の大会だったと評価しました。

 

学校を対象とした活動では、体育の授業改善や学内サッカー大会等において選手以外の生徒も参加できる取り組みを対象校の教員とともに計画・実施しました。

 

スポーツアカデミーを対象とした活動では、対象アカデミーの日常的な取り組みの丹念な観察と関係者への聞き取りで明らかになった、アカデミーが有する平和を促進する機能を向上させるために、保護者向けイベントや保護者会の設立を側面支援しました。またそこで得られた知見は、その後地方研修にも生かされ、敵対していたコミュニティの和解にも貢献しました。 

 

NUDや草の根活動の継続的な実施を推進するため、平和に資する各種スポーツ活動を提案し、その実現に向けた資金ならびに人材等の資源動員やそれに必要な調整・差配を行うことを目的とする新たなプラットフォームを構築しました。

 

しかし、厳しい経済状況が続く中、持続的な資金・資源動員を十分に達成することはできませんでした。他方で、同プラットフォームを通じて政府・競技団体・各種支援者(国連や二国間ドナー等)の関係性を強化することができました。今後は、そのようなつながりを活用し、平和促進に向けた更なる活動の推進が期待されます。

 

 

アカデミーの紹介と保護者との交流を目的としたイベントの一場面

地方研修で学んだことを生かした練習の様子

開発パートナーや民間企業関係者を招待し開催したパートナーシップフォーラム

~JICAのWebサイトでの紹介~

 

→『ODA見える化サイト』はこちら(外部リンク)

→『~スポーツで平和を促進!~ 南スーダン国スポーツ関係者14名が学校体育やスポーツクラブの地域振興について学びました!』(2022年11月4日)はこちら(外部リンク)

 


 

コンサルタントの想い

コンサルタント

内田順子

当社は2015年より10年に渡って南スーダンスポーツ案件に関わってきました。本プロジェクトでは、全国スポーツ大会の実施、コミュニティでのスポーツイベントの実施、スポーツ指導者や体育教員へのトレーニングの実施などを通じて、平和に資するスポーツに関わる人材の育成と、スポーツを振興するネットワークづくりに努めました。

紛争や経済の破綻などの大変な状況にあっても、スポーツを通じて若者を育てたい、スポーツを普及させたいという気概を持ち、真摯に取り組むカウンターパート、コーチ、学校教員など、プロジェクトに関わる皆さんから多くのことを学びました。このような仲間とともに、やりがいのあるプロジェクトに関わることが出来て幸せでした。

この案件に携わった一人でも多くの人材が、南スーダンの平和に貢献していくことを願っています。