国際協力プロジェクト

<JICA ウガンダ国 北部ウガンダ生計向上支援プロジェクト>

■分野    :農業開発

■事業形態 :技術協力

■期間    :2015年11月から2020年11月まで


農家グループの畑で行った普及員研修後に撮影した写真。研修内容は「播種と育苗」。

事業の背景

ウガンダ北部に位置するアチョリ地域は、政府軍と神の抵抗軍による内戦(1986年~2006年)の影響のため、ウガンダの中でも特に開発が遅れています。内戦当時、住民の約90%は国内避難民となり、難民キャンプで生活した経験を持っています。2006年以降、治安が改善したため、元の居住地に再定住する住民が増えましたが、未だ貧困率は高く、自立のための生計手段の確保が求められています。

 

ウガンダ北部では約90%の住民が農業に従事していますが、農業経験が少ない、技術力が低い、農業に投資する貯蓄が十分でない等の課題を抱え、多くの農民が自給的な農業に留まっています。こうした農民への生計向上に係る支援が、貧困削減及び国内の南北格差是正の観点からも重要となっているため、市場志向型農業の推進を通じたアチョリ地域の小規模農家の生計向上のための技術協力が、ウガンダ政府から要請されました。それを受け、当プロジェクトでは、市場志向型の野菜栽培・販売を通じた支援を行っています。

 


基本方針

マーケットでの市場調査の様子。売れる時期、価格、買取り方法などを調査する。

「売るために作る」

アチョリ地域では、十分な農業経験、特に換金作物の栽培経験を有していない農民が多いため、当プロジェクトでは野菜栽培の技術支援は基本技術を中心とした低投入適正規模の栽培を支援しています。また、野菜栽培技術の普及と同時に、農民に「作って売る」から「売るために作る」への意識改革を起こし、農民自らが市場志向型農業を実践するための各種支援活動の手法や考え方を整理し取り組んでいます。

 

「家族全員のために作る」

市場志向型農業推進による所得の向上のための活動に加え、生活の質の向上にかかる活動を合わせたものを当プロジェクトにおける生計向上アプローチと位置づけています。生計向上アプローチでは、野菜栽培からの収入向上を目指すだけに留まらず、家計管理と収入の有効活用の方法、栄養・衛生などの生活に密着した実践的な要素を盛り込むことによって、得られた収入を家族全員の裨益に繋げることを目指しています。

 


主な活動

5年間のプロジェクトでは、生計向上アプローチの確立を通じて、対象農民グループの生計が向上することを目標とし、さらにアチョリ地域で生計向上アプローチが定着することを上位目標として活動しています。ウガンダでは、農民に直接技術指導を行う役割を担っているのは農業普及員です。そのため、当プロジェクトは農業普及員を研修実施主体として、農民グループに対する研修を行っています。

 

生計向上アプローチの研修は、まず、「家族の目標設定」から始まります。「家族全員のために作る」の意識付けのため、世帯の中心となる家族にもこの研修への参加を促し、得られた収入の使い道を一緒に考えてもらいます。そして、本格的に一連の研修を行います。

 

「売るために作る」の“売るため”の研修では、市場調査とビジネスフォーラムが実施され、市場で売れる野菜の種類や質、時期などの情報を農民自身が調査し、さらに市場関係者や野菜の卸業者、仲介業者からの聞き取りを行います。これらの研修は、どの野菜が、どのようにしたら売れるか、という“売るため”の意識を農民が身に付けることを目的としています。そして、調査や聞き取りで得られた情報をもとに、農民グループ自らが栽培作目を決定します。

 

次に、“作る”の研修では、農民グループが決定した栽培作目に関し、播種、育苗、病害虫管理等の栽培技術と、野菜の作付け計画やコスト管理などの指導が行われます。ウガンダでは大雨期と小雨期があり、年間2回の栽培が可能です。1回目はグループの展示圃場におけるグループ単位での栽培研修を実施し、2回目以降は5人程度の小さなグループで、それまでに習得した知識・技術を個々人が実践します。当プロジェクトでは、このような小グループの仕組みを使って、技術と知識の効果的な定着を狙っています。

 

また、「家族全員のために作る」の研修は、実生活での効果を期待し、農民の現状に即した形で内容が練られています。自給自足をベースとする農民にとって、畑からの収穫物は、家族が健康に暮らすために必要な日常の食事の材料であり、かつ、売ることで医療費や学費などの需要に対応する大切な現金収入源でもあります。しかしながら、農民は作物や現金の不足に毎年直面しています。そのため当プロジェクトでは、作物の年間必要量を考えながら、不作のリスクや家族の栄養などに配慮した作付けの方法(作付け計画研修)、収穫物の備蓄や収入の管理方法と効果的な使用(家計管理研修)、さらに、家族の健康のための食生活や衛生改善の方法(栄養研修)を指導しています。

 

なお、内戦の影響で非識字者の方々が多く存在するため、視覚的な教材を多用し、難しい内容でもコンセプトの理解が容易なようにワークショップ形式の研修を実施し、よりリアルな理解と実生活での効果を期待しています。

 

さらに、当プロジェクトでは、「社会への配慮」にも力を入れています。この地域には、内戦で夫を亡くした寡婦、孤児、戦闘中に負傷したり、一般人でも地雷を踏んでしまったりして障害を持った方々が多く存在するため、プロジェクトの対象となる農民グループには、こうした社会的弱者が含まれていることを条件としました。また、グループメンバーの3割以上は女性で構成されていることを選定基準とすることで、ジェンダー配慮の仕組みも取り入れています。

 

プロジェクトは3年目に入りました。活動を通じて、普及員が野菜栽培や生活の質の向上にかかる内容を理解し、農民に対して指導する頼もしい姿が見られるようになっていると同時に、対象農民の中にも栽培した野菜を市場に出し現金収入を得始め、家庭内での変化が少しずつ現れてきています。

(2018年1月現在) 

 

展示圃場における播種の実習

アチョリ地域の農家家庭

社会的弱者に関する聞き取り調査

 

~JICAのWebサイトでの紹介~

 

→『ODA見える化サイト』はこちら(外部リンク)

→『ウガンダ北部の復興に向けて』はこちら(外部リンク)

→『栄養改善パートナー通信』第1巻第9号(季節カレンダーをつくってみよう 後編)はこちら

   (外部リンク)※3ページ目に掲載

→『栄養改善パートナー通信』第1巻第8号(季節カレンダーをつくってみよう 前編)はこちら

   (外部リンク)※3ページ目に掲載

→『SHEPなう!』はこちら(外部リンク)

→『栄養改善パートナー通信』第1巻第2号(スタッフ・石川の取材記事)はこちら

    (PDFファイル 416KB)

→『mundi』2017年2月号(代表取締役・大野とスタッフ・石川のインタビュー)はこちら

   (外部リンク)

 


 

コンサルタントの想い

事業部マネージャー

中西政文

当プロジェクトは、ウガンダのアチョリ地域を活動対象地域としていますが、当地域で20年以上続いた内戦に、非常に多くの住民が巻き込まれました。反政府武装勢力に誘拐され、家族を殺害され、元々住んでいたコミュニティーに帰還後も、社会的な偏見と向き合いながら苦労して生活している人達が多いことが、現状調査の結果わかりました。内戦は終わっても、その影響はこの地域に深く残っています。また、この地域には寡婦等の社会的な弱者も多く存在しますので、それらの社会状況に配慮しながら、弱者層も含めた農民が生計向上を実現させていくことが重要と思いますし、そこにやりがいを感じています。そのために様々な工夫が必要になると思いますので、今後もプロジェクトチームで一丸となって目標達成に取り組んでいきたいと思います。