国際協力プロジェクト
JICA 全世界市場志向型農業振興(SHEP)広域化にかかる分析及び技術 支援業務(SHEP アプローチ)(国内業務)
分野 | 市場志向型農業振興 |
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事業形態 | 調査研究 |
期間 | 2023年6月から2024年2月まで |
「アジア地域SHEP行政官研修Aコース研修」の課題演習で意見を出し合う研修参加者 |
JICAは、2006年に「SHEP(市場志向型農業振 興)アプローチ」と名付けられた農業普及アプローチを創発しました。SHEPアプローチは、ビジネスとしての農業の推進を目的に農家や関係者のモチベーションを高めるプロセスを重視しています。また、生産技術力の向上のみならず、農家が自らの営農や市場状況を勘案した経営・マーケティング戦略を立てビジネスマインドを醸成することで、多くのアフリカ諸国で対象農家の所得が増加しました。JICAはSHEPアプローチの普及活動において2019年までに20か国以上、指導者9,800人、小規模農家11万人の育成という成果を上げました。アフリカでの浸透を受け、JICAは2030年までにアジアや南米も含めた100万人の農民にSHEPアプローチを活用した農業普及サービスを届けることを新たな目標としています。また、SHEPアプローチは主に園芸作物を対象としていましたが、灌漑、畜産、稲作等の園芸以外のプロジェクトで活用される等、多様化が進んでおり、SHEP活動に係る成功要因の分析や技術支援が求められていました。
「ナミビア国別研修」の課題演習の内容について協議する講師と研修参加者 |
本業務では以下の基本方針と姿勢に基づいて業務を行いました。
1) 他の開発パートナーやJICA専門家等へのヒアリングを通じ、SHEP活動がどのように活用され、効果が現れているのかを具体的に確認し、共通要素や汎用性の有無等の視点で活用方法を分類しながら分析し、既存のプロジェクトや取組みへの活用の可能性を検討した。
2) 広域展開を促進するために、SHEPアプローチが浸透していない分野や地域でもSHEP活動の活用方法を実践例から分析し、SHEPアプローチを応用する可能性を整理した。
3) SHEPアプローチの推進において、これまで当社が活動してきたウガンダ北部地域等での経験を踏まえて、技術支援や本邦研修での講義・演習の実施等で、実践的な情報共有やアドバイスを行った。
また、上記方針に基づいて活動を行う際には、実施中のプロジェクトの成果や工夫された点、その要因等について、我々も学ばせていただく姿勢でヒアリングを行いました。
本業務の主な活動は以下の通りです。
1. 開発パートナーによるSHEPアプローチに関わる活動状況の把握と有益情報の分析
2. JICA専門家によるSHEPアプローチに関わる活動状況の把握と有益情報の分析
3. SHEPアプローチに基づいた取組みに関する優良事例集のとりまとめ
4. SHEP課題別研修の実施準備と講義・ファシリテーション
5. 国際NGOとの定期会議の取り仕切り
6. 開発パートナーへの技術支援
7. SHEPアプローチに関する広報記事の作成
SHEPアプローチは世界各地で実践されているために取り扱う情報量が多かったことから、的を絞ってヒアリングや情報収集を行い、様々な実践例に基づいた好事例集を作成することができました。また、その過程では、開発パートナーも含めたSHEPアプローチの事例をできるだけ幅広く収集する必要がありましたが、JICA事務所や専門家、コンサルタントの皆様に対象者のご紹介や日程調整、情報共有等についてご協力いただきました。
非常にクリエーティブな取り組みや、現地政府関係者が自主的にSHEPアプローチを既存の普及実施体制に組み込む形で予算を取って活動している例が複数あり、SHEPアプローチの実績に基づいてその価値が評価され、JICAが管轄する範囲を超えて広く展開されていることを確認しました。また、開発パートナーも既存のスキームにSHEPアプローチを取り入れる形で活動を実施している例も増えてきており、これまでの活動との相乗効果が期待できます。
また、本邦で行われた4つのSHEPアプローチ研修の講師も担当しましたが、いずれの研修も背景や参加者の関わり方等が異なっていたので、事前に研修コースのリーダーや現地の日本人専門家と打合せを行い、研修員のニーズに合った適切な研修を目指して、内容や説明・演習の実施方法で工夫を重ねました。
コンサルタント 中西政文 |
SHEPアプローチは世界約60ヵ国で実践されており、その活用方法は多岐に渡ります。各取組みの特徴に注意して聞取りを行い、本質部分を理解するために関係者と意見交換を行うことは非常に興味深い経験となりました。
また、異なる国や地域から参加する研修員のニーズに合った講義と演習を実施し、SHEPアプローチに関する理解を深めてもらうことは難しい面もありましたが、過去の自分の経験も活かしながらいずれの研修においても研修員のSHEPアプローチへの理解を深めてもらうことができました。研修を受講した参加者が現地で成果を出し、取りまとめた事例集等のSHEPアプローチの活用情報が更なる普及展開に役立つことを願っています。当社では開発途上国でのSHEPアプローチに基づいたプロジェクトの実施に加えて、このような日本国内でのSHEPアプローチに関する業務にも引き続き注力していきたいと考えています。