国際協力プロジェクト
JICA 全世界ジェンダー平等推進のための介入手法に係る情報収集・確認調査(保健・教育分野)
| 分野 | ジェンダー |
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| 事業形態 | 情報取集・確認調査 |
| 期間 | 2023年7月から2025年10月まで |
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マサイ族の村で実施した宗教指導者向けGBV対応研修の様子(ケニア) |
JICAでは、開発途上国における持続可能な社会の実現に向け、事業の計画・実施・評価の各段階でジェンダー平等と女性のエンパワメントを推進しています。女性と男性が等しく開発の恩恵を受け、それぞれの能力を十分に発揮できる社会を実現するためには、事業のあらゆる段階でジェンダーの視点を取り入れる「ジェンダー主流化」が不可欠です。本調査では、アフリカ地域を中心に、保健医療分野と教育分野におけるジェンダー課題を整理するとともに、JICA事業へ適用可能なジェンダー主流化の手法を検討しました。保健医療分野では、非感染性疾患(NCDs)対策、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)、ジェンダーに基づく暴力(GBV)への対応を重点テーマとし、教育分野では女子教育や教育機会の格差など、社会・文化的背景に起因する課題を分析しました。
また、紛争影響国・脆弱国では、女性や少女が暴力や差別などの深刻な影響を受けやすいことから、女性の和平・復興への参画や保護・権利保障を含む平和構築の視点についても整理しました。本調査を通じて、各分野における課題や優良事例を分析し、JICA事業において実践可能なジェンダー主流化の介入手法を提案しました。
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コミュニティヘルスプロモーター向けのGBV対応研修(グループワーク)の様子(ケニア) |
本調査では、アフリカ地域を中心に、①NCDs対策、②SRHR、③GBVの撤廃、④教育、⑤平和構築(紛争影響国・脆弱国支援)の5領域を対象に、ジェンダー主流化を推進するための実践的な介入手法を検討しました。
調査は2023年7月から2025年10月まで実施し、「情報収集フェーズ」と「パイロット活動フェーズ」の2段階で進めました。情報収集フェーズでは、各分野におけるジェンダー課題や国際機関・NGO・地域機関の取り組みを整理するとともに、JICA事業との比較分析を行い、優良事例や今後活用可能な教訓を抽出しました。その結果を踏まえ、JICA事業に導入が期待される介入手法を提案するとともに、その有効性を検証するためのパイロット活動を計画しました。
パイロット活動フェーズでは、対象国において介入手法を実際に導入し、その効果や実現可能性を検証しました。活動の成果はモニタリングや関係者への聞き取りを通じて分析し、社会生態学的モデル、ライフコースアプローチ、ジェンダー・トランスフォーマティブ・アプローチなどの分析手法を用いて、個人・家庭・地域・制度の各レベルから課題と成果を整理しました。これらの結果を基に、今後のJICA事業で活用できる実践的なジェンダー主流化の手法を取りまとめました。
NCDs対策では、ナイジェリアとカンボジアで健康行動や医療サービスへのアクセスに影響を与えるジェンダー課題を分析しました。その結果、学校・家庭・地域が連携した健康教育や、男女それぞれが直面する課題に応じた支援の重要性を確認しました。SRHRでは、シエラレオネで母子手帳と参加型ママパパクラスを組み合わせた活動を実施し、男性の産前健診への同行や家事参加、カップル間の対話の促進など、家庭内の行動変容につながる成果を得ました。
GBVの撤廃では、ケニアにおいて被害者支援センターの機能強化、支援者向けケースマネジメント研修、宗教指導者への啓発活動、女性の生計向上支援を実施しました。ソフト・ハードの両面から支援体制を強化したことで、被害者中心のワンストップ支援体制の構築やオンライン裁判への対応など、新たな支援モデルの構築に貢献しました。教育分野では、エチオピアでジェンダー対応型教授法の導入を支援し、女子児童・生徒の授業参加や教員・保護者・地域住民のジェンダー意識の向上を確認しました。また、JICA関係者向けのオンデマンド教材を開発し、教育事業においてジェンダー主流化を実践するための人材育成にも取り組みました。
さらに、紛争影響国・脆弱国を対象とした調査では、保健医療、教育、平和構築の各分野を横断的に分析し、女性や少女の保護、ジェンダーに基づく暴力への対応、地方行政への女性の参画などを含む具体的な介入策を提案しました。
本調査を通じて、ジェンダー主流化は特定分野だけの課題ではなく、保健医療、教育、平和構築をはじめとする様々な分野で事業効果を高める重要な視点であることを示しました。また、情報収集からパイロット活動、モニタリングと成果の検証、提言までのプロセスを通じて、今後のJICA事業で活用可能な実践的手法として取りまとめました。
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中学校に新設された女子サッカークラブ(ナイジェリア) |
ジェンダーに配慮した健康なライフスタイル促進教材(ナイジェリア) |
住民向け健康チェックの様子(ナイジェリア) |
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コンサルタント 佐藤千咲 |
「ジェンダー主流化」は、国際協力において誰もが無視できない重要な視点となっています。一方で、それを現場でどのように実践し(How)、プロジェクトの価値向上につなげていくかについては、まだ模索が続いています。当社が実施した本調査では、JICA技術協力や国際機関の取組を基に、こうした問いに対するアプローチを分析・整理し、実践的な提言を行いました。
例えば、ナイジェリアで実施した非感染性疾患(NCD)予防のパイロット活動では、ジェンダーの視点を取り入れることで、男女それぞれが抱える異なる課題が見えてきました。女子は家事負担や「スポーツは男子のもの」といった固定観念から運動の機会が限られる一方、男性は「保健センターは女性が行く場所」「男は強くあるべき」といった意識から健診を受けにくい状況にあります。ジェンダー主流化とは女性だけを対象にすることではなく、個々が置かれた社会制度・文化・身体的背景を理解し、活動を具体化する重要な視点と思います。目指すべきは、全員に同じ対応をする「Equality(平等)」ではなく、それぞれのニーズに応じた機会を届ける「Equity(公正)」なのだと、本調査を通して改めて実感しました。
ジェンダーの視点は、保健や教育に限らず、あらゆる分野に応用できる考え方です。今後も、ジェンダーを単なる理念で終わらせるのではなく、「どのような取組が、どのような成果につながったのか」を現場で実践・検証しながら、プロジェクトの価値向上に貢献していきたいと考えます。