国際協力プロジェクト

JICA 南スーダン国 包括的農業開発マスタープラン策定支援プロジェクト

分野 農業開発
事業形態 技術協力
期間 2015年7月から2017年2月まで

開発計画検討・協議の様子

事業の背景

2011年7月にスーダンから独立した南スーダンは、豊富な降雨量と肥沃な土壌、大規模な森林地帯、広大な放牧地や多数の家畜(特に牛はアフリカ諸国で最も多い)、ナイル川を中心とした河川からの豊富な水産資源など、農業セクター全体で大きな開発・発展の可能性を秘めた国です。しかし、独立当初は、農業は自給自足程度にとどまり、多くの食料を輸入に頼る一方、国民の約40%近くが慢性的な飢餓と食料不足に陥っている状況でした。また、国の歳入の90%以上を石油に依存していますが、生産量や価格の不安定さもあり、国は慢性的な財政赤字を抱え、石油に代わる産業の育成が求められていました。このような状況の中、南スーダン政府は、農業セクターの開発を通じた、食料不足の克服や農村部の生計向上、農業の産業化等を目指して、農業の長期開発計画を策定することを決め、そのための技術支援を日本政府に求めました。

 


主な活動

政府関係者と多様な国籍の専門家たち

 

2012年7月から2015年6月までの約3年間、『包括的農業開発マスタープラン(CAMP: Comprehensive Agriculture Master Plan)』の策定支援フェーズとして、様々な活動を実施しました。まず農業セクターの開発ニーズを把握するために、全10州(当時)50以上の郡を訪問して、農業の主要4分野(作物、畜産、林業、水産)に関する現状調査を行うと共に、全国の生計関連の統計データを分析しました。また、省庁を中心に農業セクターに関連した組織の現状、および事業実施能力についての調査・分析も行いました。それらの結果をもとに、2040年までの25年間に優先的に開発すべき事業(プログラムやプロジェクト)の特定や、その実現に向けた具体的な支援の枠組みを整理しました。こうした活動を経て、農業セクターにおける110の事業計画案を含んだCAMPが完成しました。

 

その後、2015年7月から2017年2月までは実施支援フェーズとして、CAMPを実現するための方法や仕組みの在り方の検証と、政府関係者の能力強化を図るための活動を実施しました。特に、国としての活動予算が十分に確保されていない状況で、どのように他の開発パートナーと連携して事業を実現していくかを重点的に検証していきました。また、南スーダンで深刻な問題となっている牛をめぐる農民と牧畜民や牧畜民同士の紛争に関する調査や、事業の実施に欠かせない農業セクターに関する法の整備状況に関する調査も行いました。さらに、南スーダン国内や開発パートナーらに向けて、CAMPの重要性を表現した風刺漫画の新聞掲載や、南スーダンの国民的歌手によるキャンペーンソングやドラマの製作、国営テレビやラジオ局の取材促進など、広報宣伝活動にも力を入れました。

 

そして、2017年3月、CAMPは南スーダンの国会で承認されました。正式な国家文書になったことは、今後の南スーダンの農業開発に対する強い意志と覚悟が示されたことになります。

 


基本方針

当プロジェクトは、長期の開発計画を策定するだけでなく、その計画が南スーダンにとって“実現可能なものにする”ことを重要視しています。そのため、農業の主要4分野(作物、畜産、林業、水産)以外にも、「行財政管理」、「会計監査」、「民間投資促進」、「環境社会配慮」、「研修」、「モニタリング評価」等の総合的な分野を活動範囲として、関連政府機関・職員の能力強化や事業実施のための制度の構築を図りました。

 

また、プロジェクトの実施体制も特徴的です。日本人に拘らずに、南スーダンの現場に精通した専門家を人選した結果、英国、米国、マラウイ、ケニア、ジンバブエ、ウガンダ、フィリピン等の多国籍な人材で構成されたプロジェクトチームとなりました。さらにEU、GIZ(ドイツ国際協力公社)、CIDA(カナダ国際開発局)、FAO(国連食糧農業機関)の各専門家とも連携するなど、国際色豊かな専門家が一丸となって当プロジェクトを支えました。

 

(2019年9月現在) 

 

現地農家との協議風景

水産業者との協議風景

関係者との全体会合の様子

 

~JICAのWebサイトでの紹介~

 

→『ODA見える化サイト』はこちら(外部リンク)

 


 

コンサルタントの想い

事業部長

半田茂喜

 

この国は、農業セクターを筆頭に非常に大きな開発・発展の可能性を秘めています。しかし、過去数多くの不幸な内戦を経験し、国、組織、産業、人々の心等、全てが疲弊したまま、つまり国の土台が十分に整っていないまま独立してしまい今に至っているとの印象を持っています。そんな中私たちに求められるのは、いきなりの高望みをした開発・発展を目指すのではなく、目の前にある基礎的な一つ一つの課題を、現地の関係者と共に、こつこつと解決していくことに尽きると思っています。そのため、技術的な面だけでなく、時には関係者とぶつかり合いながらも、この国を想い、根気強く、物事に取り組む姿勢が私たちに求められます。アフリカに伝わる以下のようなことわざがあります。「if you want to go fast, go alone. if you want to go far, go together」。遠い未来のさらなる発展を目指して、これからも、こつこつ現地の関係者と共に前に進みたいと思っています。